■ 裁判の結論
・亡くなった方の銀行口座の取引明細(入出金履歴)は、相続人なら1人でも請求できる
・他の相続人の同意は不要
・開示は「預金契約上の権利」であり、プライバシー侵害にも当たらない
・相続トラブルで銀行の取引状況を知りたいときに極めて重要な判例
■ 事案の概要
被相続人(父と母)が亡くなり、その子(相続人の一人)が、金融機関(信用金庫)に対
して父母名義の預金口座の取引履歴の開示を求めました。
しかし、金融機関は「他の相続人全員の同意が必要」として開示を拒否しました。
そこで、相続人が金融機関に対し取引履歴の開示を求めて提訴しました。
争点は、
「相続人の一人が、単独で被相続人の取引履歴の開示を請求できるのか?」
という点でした。
■ 最高裁の判断
最高裁は、相続人1人だけでも被相続人の預金取引明細の開示を請求できると判断しまし
た。
■ 1. 預金契約には「取引状況を開示する義務」が含まれる
預金契約は、
・金銭の保管・返還という「消費寄託」
・入出金処理や自動引落、利息計算などの「委任契約的な業務」
の両方の性質を持ちます。
そして、委任契約では、受任者(銀行)は委任者(預金者)に事務処理の状況を報告する義
務(民法645条、656条)を負います。
そのため、最高裁は次のように結論づけました。
銀行には預金者の求めに応じて取引経過を開示する義務がある。
■ 2. 相続人は預金契約上の地位を「共同で承継」する
相続人は、相続により、被相続人の預金債権(返還請求権)、すなわち、預金契約上の地
位(報告を求める権利など)を承継します。
そして、預金契約上の地位に基づく「取引明細の開示請求権」は、相続人1人が単独で行
使できる(民法252条ただし書)と判断されました。
つまり、他の相続人の同意は不要ということです。
■ 3. プライバシー侵害・守秘義務違反には当たらない
また、相続人への開示は
・亡くなった預金者のプライバシーを侵害しない
・金融機関の守秘義務違反にも当たらない
と最高裁は明言しています。
■ 4. ただし「権利濫用」には注意
例外的に、請求範囲が過度に広いなど、明らかに不当な態様の請求は権利濫用として拒否
される可能性があります。なお、この事案ではそのような事情はありませんでした。
■ この判例が実務にもたらす重要な意味
相続の実務では、以下の場面で取引履歴が極めて重要です。
・相続財産の確定
・遺産の使途不明金の調査
・生前贈与(特別受益)の確認
・遺産分割協議の準備
この判例によって、相続人1人が単独で金融機関に対して取引履歴を請求できることが明
確化され、他の相続人の不協力によって調査が妨げられる心配がなくなりました。
■ 弁護士からのコメント
この最高裁判例は、相続トラブルの調査・解決において欠かせない重要な判断です。
取引履歴の入手は、
・使い込みの有無
・生前贈与の確認
・財産調査
など、相続の初期段階で重要な役割を果たします。
金融機関が開示に消極的な場合も、弁護士が代理人として照会することでスムーズに解決
できるケースがあります。
相続に関する調査でお困りの場合は、早めにご相談ください。
■ まとめ
・相続人は、亡くなった親などの被相続人の預金取引明細を単独で開示請求できます。
・その際、他の相続人の同意は不要です。
・相続トラブルの調査・解決に極めて重要な判例です。
相続人は「単独で」亡くなった親の銀行取引明細を請求できる(最判平成21年1月22日)
交通に便利な事務所です。
お気軽にお越しください。
堺筋本町駅徒歩1分
電話での簡単な相談、初回の面談は無料です。
秘密厳守
電話でのお問い合わせはこちら
月曜〜金曜日 9:00〜18:00
メールのお問い合わせはこちら
いつでもお受けしております
LINE相談をはじめました。
気兼ねなくお問い合わせください。