結論としては、
遺産分割は相続開始時に「遡って効力が生じる」とされているが、収益物件の賃料債権の帰属には影響しない。収益物件から生じた賃料は、遺産分割が確定するまでの期間は共同相続人の法定相続分に応じて分割単独債権として取得される。
したがって、遺産分割によって収益物件自体を取得しても、収益物件を相続した人が相続開始以降、遺産分割成立までの間の賃料を全額取得することはできない。
相続財産の管理・賃料収入の処理を巡って争いが発生する典型事案であり、実務上極めて重要。
■ どんな事件だったのか?
被相続人(父)が死亡し、妻と4人の子が法定相続人となった。遺産には収益物件が多数含まれていた。相続人らは、収益物件から生じる賃料を管理するために共有名義の銀行口座を開設して賃料・管理費などをその口座で管理し、遺産分割が確定した後に清算することを合意していた。その後、家庭裁判所の遺産分割審判が確定し、収益物件の帰属が決まった。
しかし、問題はここからである。
■ 賃料の帰属を巡って対立
妻(被上告人)は、遺産分割は相続開始時に遡ることになっているため、相続開始後に生じた収益物件の賃料も、相続開始時に遡って「その収益物件を取得した相続人」に帰属すべきとし、その結果、清算後に残った金員(本件保管金、収益物件から管理費などの支出を除いたもの)は全額自分のものと主張した。
これに対し、子ら(上告人ら)は、賃料は「遺産とは別個の財産」であり、遺産分割確定までは法定相続分どおり各相続人に帰属するとして、本件保管金は法定相続分に応じて清算すべきと主張した。
原審(高裁)は、妻の主張を採用し、本件保管金全額が妻に帰属することを認めた。
■ 最高裁の判断:相続開始後の収益物件の賃料は「遺産とは別の財産」 → 相続分に応じて取得する
最高裁は原審を全面的に否定し、次のように判断した。
■ 1. 相続開始後の収益物件の賃料債権は「遺産とは別個の財産」
遺産である不動産(収益物件)は相続開始から遺産分割まで共同相続人の共有状態にある。しかし、そこから生じる賃料は、その都度発生する「新たな債権」であり、遺産そのものではない。
よって、賃料債権は相続開始と同時に法定相続分で分割され、各相続人が確定的に取得する。
■ 2. 遺産分割の遡及効は賃料の帰属には及ばない
遺産分割は相続開始に遡るものの、それはあくまで、遺産そのものの帰属関係、具体的相続分の確定に関する効力である。
しかし、賃料のような「遺産とは別に発生した債権」については、遺産分割によって帰属が変わることはない。
■ 3. 結論:賃料は法定相続分に応じて取得、保管金もその前提で清算すべき
したがって本件では、遺産分割確定までの収益物件の賃料は法定相続分に応じて子らにも帰属し、妻が遺産分割によって収益物件を取得したとしても、その賃料の単独取得は認められないとした。
■ この判例の実務上のポイント
1. 相続開始後の収益物件の賃料は「相続分による按分」となり、遺産分割が未了の状態で得た収益は、相続人全員の収益として扱うこととなる。
2. 遺産分割の遡及効は万能ではなく、「遺産そのもの」と「遺産から生じる果実(賃料)」は別に扱われる。
3. 賃料の管理口座を作るケースで紛争が起こりやすいため、本件のように清算方法をめぐって争いになることが多い。
4. 管理者が賃料を独占利用したケースでは不当利得・損害賠償が問題になる。このような事情がある場合には、本判例の枠組みで「誰がいくら取得するべきか」計算する必要がある。
■ 弁護士からのコメント
不動産を複数相続するケース、特に収益物件が含まれるケースでは、賃料の取り扱いで紛争が頻発します。「誰が収益物件を管理しているか」、「誰が賃料を受け取っているか」、「いつ遺産分割が確定したか」などによって、各相続人が取得すべき金額が大きく変わります。
今回の最高裁判例は、賃料の帰属は遺産分割確定まで法定相続分というルールを明確化したもので、実務での指針として非常に重要です。
収益物件が関係する相続では、早期に法的整理を進めることが重要です。
■ まとめ
遺産分割の遡及効は賃料債権の帰属には影響しない。
相続開始後の収益物件の賃料は「遺産とは別の財産」であり、法定相続分で分けられる。
交通に便利な事務所です。
お気軽にお越しください。
堺筋本町駅徒歩1分
電話での簡単な相談、初回の面談は無料です。
秘密厳守
電話でのお問い合わせはこちら
月曜〜金曜日 9:00〜18:00
メールのお問い合わせはこちら
いつでもお受けしております
LINE相談をはじめました。
気兼ねなくお問い合わせください。